つながりを楽しめる写真絵本「自然のかくし絵」レビュー
小学校国語科3年生の教材にもなっている本作品。
「知のつながり」を楽しめる絵本です。
1.写真絵本 自然のかくし絵 ―昆虫の保護色と擬態
タイトル | 写真絵本 自然のかくし絵―昆虫の保護色と擬態 |
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発行年 | 初版 1983年 |
作者 | 矢島 稔 |
出版社 | 偕成社 |
本のサイズ | 約22×26cm |
ページ数 | 68ページ |
対象年齢 (公式なものではなく、私の感覚です) |
小学校中学年頃~ |
オススメ度 | ★★★☆☆ |
2.あらすじ・内容
東京動物園協会理事長を務められた経験のある、作者の矢島稔氏が魅せられた昆虫を長年撮りためた写真の一部を、説明文と共に紹介したものです。
50年以上もの歳月の中で、矢島氏がいつも関心をもち続けていたのが擬態と保護色についてでした。
自然の中に擬態し、身を隠している昆虫を多数紹介しています。
しかし、極彩色のジャングルの中に身を隠すような大きな昆虫などは載っていません。
本作品に掲載されている写真は、全て日本の野山で撮影されたもの。
それは、矢島氏が、身近にも擬態や保護色といった不思議な生態の生き物が潜んでいることを知ってほしかったからだそうです。
子供たちに身近な生物の不思議に目を向けてほしいとの願いが込められています。
3.つながる喜びも読書の楽しみ
「これ知ってる」「もしかして、授業でやったのと同じかな」
本に書かれていることと、実生活の中の何かがつながった時、嬉しくなりませんか。
子供の方が人生経験が浅い分、この「つながり」に対する喜びは大きいのではないかと思います。
このようなつながり体験は、学ぶ楽しさに発展していく大事なものです。
国語の教科書に採用されている
本作品は、東京書籍の3年生の国語科教科書に採用されています。
教科書に、しかも中学年ということで、説明文として読みやすいものだと言えるでしょう。
一方、教科書というフィルターがかかることで、しっかり読む前に「きっとつまならないもの」と思い込んでしまう子供もいるはず。
しかし、教科書で読んだものを本で登場させると、途端に興味をもつという場合もあります。
私が小学校教員として勤務していた頃は、国語の読み物や、それに関連する書籍を教室に置いていました。
あまり学習に前向きになれない子供も、手に取って中を見る様子がありました。
「これ、国語で読んだことある」という「つながり」を感じ、興味を引かれるのです。
そして、教科書よりも大きく、たくさんの写真のの共に書かれる文章には、教科書からは得られなかった発見もあるのではないでしょうか。
そっクリーのうた
ミミクリー(mimicry)とは、似せる、似ているという意味です。
自然界の似たもの探しをすることで、子供たちの知的好奇心を触発する、幼児向け番組です。
2歳の息子は、このミミクリーズという番組が大好きで、録画したものを1日に5回は視聴するのです。
この番組に「そっクリーのうた」という歌があります。
擬態や保護色をテーマにした歌で、自然の中に擬態した生き物たちの映像と共に流れます。
今回ご紹介している「自然のかくし絵」との出会いは、息子と「このご本『そっクリーのうた』と同じじゃない?」と図書館で見つけて借りてきたことでした。
息子はまだ文章を楽しむことはできませんが、大好きなミミクリーズを見るように、「自然のかくし絵」の中の写真から、生き物を探しています。
「ミミクリーズ、おんなじ」と言って喜んでいました。
これも、既知のことや実生活との「つながり」を楽しんでいると言えるでしょう。
「つながり」も読書の楽しみの一つです。
本作品からつながりを見出し、その楽しみを感じてみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。