絵本レビュー「サカサかぞくのだんながなんだ」
言葉遊びは、言葉への興味関心を高めます。
今回ご紹介する絵本は、そんな言葉遊びが楽しめる作品です。
1.サカサかぞくのだんながなんだ
ほるぷ★バレンタインに贈りたい14選 10:今回ご紹介したいのは、なんと!すべて回文でお話ができている『サカサかぞくのだんながなんだ』(宮西達也作)。愛も、楽しさも、ばっちりつまった絵本。回文でできたラブストーリー、いかがでしょうか。 pic.twitter.com/KP6hQLKgn5
— ほるぷ出版 (@holppub) 2014年2月7日
タイトル | サカサかぞくのだんながなんだ |
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発行年 | 2009年 |
作者 | 宮西達也 |
出版社 | 株式会社ほるぷ出版 |
本のサイズ | 24.7×21.5cm |
ページ数 | 32ページ |
対象年齢 (公式なものではなく、私の感覚です) |
4,5歳~ |
オススメ度 | ★★★★☆ |
2.あらすじ・内容
原子時代の大家族「サカサかぞく」。
イカを食べてしまっただんなに、つまは怒って「だんながなんだ」と出て行ってしまいます。
だんなは子供たちとつまの帰宅を待ちます。
その間に、祖父母が世話をしに来たり色々なことがあります。
最終的には、つまのピンチをだんなが救うことで仲直り。
キスをして終わるのです。
…ここまで、「なんだかよくわからない内容だな」と思われるでしょう。
なんと、この物語は全て回文でできているのです。
3.なぜ面白いのかわからない「回文」
「回文」とは、上から読んでも下から読んでも同じになる文です。
例えば「たけやぶやけた」など。
この作品は全て回文ができているのが、なんとも笑えるのです。
なぜか楽しい!大人も笑える回文の物語
上記のあらすじをご覧いただければわかるかと思いますが、物語としては少し無理があります。
それは、回文だけで何とか仕上げているからでしょう。
このように言うと、「無理やり回文で書いているだけ」と思われてしまいそうですが、それがこの作品の魅力でもあるのです。
つまの怒りの発端はだんながイカを食べたことですが、それを問い詰めるのが「いかたべたかい」。
それを見た子供たちも「かんけいないけんか」を始めます。
どうやって思いついたのかと思う回文と展開が、大人も子供も思わず笑ってしまいます。
読後、「為になった」「考えさせられた」というようなものは何も残りませんが、子供と一緒に笑って、楽しい気持ちが残る作品です。
実は楽しいだけじゃない
回文でできたこのような作品を楽しむことには、教育効果があるのです。
幼稚園教育要領では、生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付くことを通し、言葉で表す喜びや、伝え合いができるようになることを目指しています。
小学校国語科の学習指導要領には、どの学年にも「言語文化に親しんだり理解したりすることができるようにする。」との記載があります。
回文で言葉の楽しさに気づき、言葉というものに興味をもつことは、伝え合いや豊かなコミュニケーションへの芽になると言えるでしょう。
▼参考
回文でできているというだけで、無理があって面白い。
でも、その「面白い」によって言語の楽しさに気づき、コミュニケーション能力や作文力にもつながっていくのではないでしょうか。