絵本について話したい

元小学校教員、6歳娘・3歳息子の母、専業主婦、絵本と小説が好きです

絵本レビュー「サカサかぞくのだんながなんだ」

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言葉遊びは、言葉への興味関心を高めます。

今回ご紹介する絵本は、そんな言葉遊びが楽しめる作品です。

 

1.サカサかぞくのだんながなんだ

 

 

タイトル サカサかぞくのだんながなんだ
発行年 2009年
作者 宮西達也
出版社 株式会社ほるぷ出版
本のサイズ 24.7×21.5cm
ページ数 32ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
4,5歳~
オススメ度 ★★★★☆

 

2.あらすじ・内容

原子時代の大家族「サカサかぞく」。

イカを食べてしまっただんなに、つまは怒って「だんながなんだ」と出て行ってしまいます。

だんなは子供たちとつまの帰宅を待ちます。

その間に、祖父母が世話をしに来たり色々なことがあります。

最終的には、つまのピンチをだんなが救うことで仲直り。

キスをして終わるのです。

…ここまで、「なんだかよくわからない内容だな」と思われるでしょう。

なんと、この物語は全て回文でできているのです。

 

3.なぜ面白いのかわからない「回文」

「回文」とは、上から読んでも下から読んでも同じになる文です。

例えば「たけやぶやけた」など。

この作品は全て回文ができているのが、なんとも笑えるのです。

 

なぜか楽しい!大人も笑える回文の物語

上記のあらすじをご覧いただければわかるかと思いますが、物語としては少し無理があります。

それは、回文だけで何とか仕上げているからでしょう。

このように言うと、「無理やり回文で書いているだけ」と思われてしまいそうですが、それがこの作品の魅力でもあるのです。

つまの怒りの発端はだんながイカを食べたことですが、それを問い詰めるのが「いかたべたかい」。

それを見た子供たちも「かんけいないけんか」を始めます。

どうやって思いついたのかと思う回文と展開が、大人も子供も思わず笑ってしまいます。

読後、「為になった」「考えさせられた」というようなものは何も残りませんが、子供と一緒に笑って、楽しい気持ちが残る作品です。

 

実は楽しいだけじゃない

回文でできたこのような作品を楽しむことには、教育効果があるのです。

幼稚園教育要領では、生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付くことを通し、言葉で表す喜びや、伝え合いができるようになることを目指しています。

小学校国語科の学習指導要領には、どの学年にも「言語文化に親しんだり理解したりすることができるようにする。」との記載があります。

回文で言葉の楽しさに気づき、言葉というものに興味をもつことは、伝え合いや豊かなコミュニケーションへの芽になると言えるでしょう。

▼参考

文部科学省 幼稚園教育要領 ねらい及び内容

【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

 

回文でできているというだけで、無理があって面白い。

でも、その「面白い」によって言語の楽しさに気づき、コミュニケーション能力や作文力にもつながっていくのではないでしょうか。

 

 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。