絵本について話したい

元小学校教員、6歳娘・3歳息子の母、専業主婦、絵本と小説が好きです

身近な生き物ダンゴムシ「ダンゴムシ みつけたよ」絵本レビュー

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ダンゴムシは子供にとって最も身近な生き物の一つ。

たくさん集めてポケットに詰めている、なんてこともよくあります。

 

1.ダンゴムシ みつけたよ

 

タイトル ダンゴムシ みつけたよ
発行年 初版 2002年
作者 文・写真 皆越ようせい
出版社 株式会社ポプラ社
本のサイズ 20.7×26.2cm
ページ数 35ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
2,3歳頃から
オススメ度 ★★★★☆

 

2.内容・あらすじ

写真と、簡単でとてもわかりやすい文章でダンゴムシの生態について語られています。

ダンゴムシが主にどんなところにいるか。

何を食べるか。

いつ、どのように繁殖し、どのように成長して一生を終えるか。

主語を「ぼく」として、ダンゴムシの目線で、これらの生態が綴られます。

 

3.どこをとっても幼児にフィット!

こちらの写真絵本は、どこをとっても小さな子供にフィットするようにできているのが、本当に素晴らしいと思います。

 

ダンゴムシ」という選択

まず、絵本のテーマとした生き物がダンゴムシであるという点です。

ダンゴムシは、小さな子供にとってとても身近な生き物。

犬や猫は、飼っているかどうかで、身近さの度合いが大きく違います。

また、同じ「虫」の括りでも、アリでは生態について割と知られていますし、蝶々・カマキリやカブトムシなどでは、身近に感じない子供も多いでしょう。

多くの子供にとって身近で、その割に生態があまり知られていない、でも特徴的で興味をそそられる生き物。

その選択として「ダンゴムシ」は子供にピッタリだと思います。

 

図鑑ではない

物語というのではありませんが、図鑑でもありません。

小さな子供にとっては、いわゆる昆虫図鑑でダンゴムシの生態を理解するのは難しいでしょう。

やわらかく、分かりやすい文章で書かれているので、ダンゴムシがどんな生き物なのかつかみやすくなっています。

また、全てのページにイラストや図ではなく、写真が載せられているのも、子供にとって理解しやすいポイントだと言えます。

 

ダンゴムシ」に絞っている

ダンゴムシに絞っているというのも、小さな子供に合う点でしょう。

色々な虫について記載する形式ではないので、子供が本当に興味のある「ダンゴムシ」について詳しく知ることができるのです。

 

ダンゴムシ」は多くの子供にとって、とても身近な生き物。

2,3歳のお子さんであれば、生き物を知る第一歩の絵本となるでしょう。

4歳以上のお子さんには、身近な生き物についての新たな発見になると思います。

ド定番!という作品でもないと思いますので、カブリの懸念なく、お友達のお子さんやお孫さんにプレゼントできますよ。

(ただ、ダンゴムシのアップ写真が多く掲載されていますので、人によっては注意が必要かもしれません…)

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

つながりを楽しめる写真絵本「自然のかくし絵」レビュー

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小学校国語科3年生の教材にもなっている本作品。

「知のつながり」を楽しめる絵本です。

 

1.写真絵本 自然のかくし絵 ―昆虫の保護色と擬態

 

 
 
タイトル 写真絵本 自然のかくし絵―昆虫の保護色と擬態
発行年 初版 1983年
作者 矢島 稔
出版社 偕成社
本のサイズ 約22×26cm
ページ数 68ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
小学校中学年頃~
オススメ度 ★★★☆☆

 

2.あらすじ・内容

東京動物園協会理事長を務められた経験のある、作者の矢島稔氏が魅せられた昆虫を長年撮りためた写真の一部を、説明文と共に紹介したものです。

50年以上もの歳月の中で、矢島氏がいつも関心をもち続けていたのが擬態と保護色についてでした。

自然の中に擬態し、身を隠している昆虫を多数紹介しています。

しかし、極彩色のジャングルの中に身を隠すような大きな昆虫などは載っていません。

本作品に掲載されている写真は、全て日本の野山で撮影されたもの。

それは、矢島氏が、身近にも擬態や保護色といった不思議な生態の生き物が潜んでいることを知ってほしかったからだそうです。

子供たちに身近な生物の不思議に目を向けてほしいとの願いが込められています。 

 

3.つながる喜びも読書の楽しみ

「これ知ってる」「もしかして、授業でやったのと同じかな」

本に書かれていることと、実生活の中の何かがつながった時、嬉しくなりませんか。

子供の方が人生経験が浅い分、この「つながり」に対する喜びは大きいのではないかと思います。

このようなつながり体験は、学ぶ楽しさに発展していく大事なものです。

 

国語の教科書に採用されている

本作品は、東京書籍の3年生の国語科教科書に採用されています。

教科書に、しかも中学年ということで、説明文として読みやすいものだと言えるでしょう。

一方、教科書というフィルターがかかることで、しっかり読む前に「きっとつまならないもの」と思い込んでしまう子供もいるはず。

しかし、教科書で読んだものを本で登場させると、途端に興味をもつという場合もあります。

私が小学校教員として勤務していた頃は、国語の読み物や、それに関連する書籍を教室に置いていました。

あまり学習に前向きになれない子供も、手に取って中を見る様子がありました。

「これ、国語で読んだことある」という「つながり」を感じ、興味を引かれるのです。

そして、教科書よりも大きく、たくさんの写真のの共に書かれる文章には、教科書からは得られなかった発見もあるのではないでしょうか。

 

そっクリーのうた

Eテレの「ミミクリーズ」という番組をご存じですか。

ミミクリー(mimicry)とは、似せる、似ているという意味です。

自然界の似たもの探しをすることで、子供たちの知的好奇心を触発する、幼児向け番組です。

2歳の息子は、このミミクリーズという番組が大好きで、録画したものを1日に5回は視聴するのです。

この番組に「そっクリーのうた」という歌があります。

擬態や保護色をテーマにした歌で、自然の中に擬態した生き物たちの映像と共に流れます。

今回ご紹介している「自然のかくし絵」との出会いは、息子と「このご本『そっクリーのうた』と同じじゃない?」と図書館で見つけて借りてきたことでした。

息子はまだ文章を楽しむことはできませんが、大好きなミミクリーズを見るように、「自然のかくし絵」の中の写真から、生き物を探しています。

ミミクリーズ、おんなじ」と言って喜んでいました。

これも、既知のことや実生活との「つながり」を楽しんでいると言えるでしょう。

www.nhk.or.jp

 

「つながり」も読書の楽しみの一つです。

本作品からつながりを見出し、その楽しみを感じてみてください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

絵本レビュー「サカサかぞくのだんながなんだ」

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言葉遊びは、言葉への興味関心を高めます。

今回ご紹介する絵本は、そんな言葉遊びが楽しめる作品です。

 

1.サカサかぞくのだんながなんだ

 

 

タイトル サカサかぞくのだんながなんだ
発行年 2009年
作者 宮西達也
出版社 株式会社ほるぷ出版
本のサイズ 24.7×21.5cm
ページ数 32ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
4,5歳~
オススメ度 ★★★★☆

 

2.あらすじ・内容

原子時代の大家族「サカサかぞく」。

イカを食べてしまっただんなに、つまは怒って「だんながなんだ」と出て行ってしまいます。

だんなは子供たちとつまの帰宅を待ちます。

その間に、祖父母が世話をしに来たり色々なことがあります。

最終的には、つまのピンチをだんなが救うことで仲直り。

キスをして終わるのです。

…ここまで、「なんだかよくわからない内容だな」と思われるでしょう。

なんと、この物語は全て回文でできているのです。

 

3.なぜ面白いのかわからない「回文」

「回文」とは、上から読んでも下から読んでも同じになる文です。

例えば「たけやぶやけた」など。

この作品は全て回文ができているのが、なんとも笑えるのです。

 

なぜか楽しい!大人も笑える回文の物語

上記のあらすじをご覧いただければわかるかと思いますが、物語としては少し無理があります。

それは、回文だけで何とか仕上げているからでしょう。

このように言うと、「無理やり回文で書いているだけ」と思われてしまいそうですが、それがこの作品の魅力でもあるのです。

つまの怒りの発端はだんながイカを食べたことですが、それを問い詰めるのが「いかたべたかい」。

それを見た子供たちも「かんけいないけんか」を始めます。

どうやって思いついたのかと思う回文と展開が、大人も子供も思わず笑ってしまいます。

読後、「為になった」「考えさせられた」というようなものは何も残りませんが、子供と一緒に笑って、楽しい気持ちが残る作品です。

 

実は楽しいだけじゃない

回文でできたこのような作品を楽しむことには、教育効果があるのです。

幼稚園教育要領では、生活の中で言葉の楽しさや美しさに気付くことを通し、言葉で表す喜びや、伝え合いができるようになることを目指しています。

小学校国語科の学習指導要領には、どの学年にも「言語文化に親しんだり理解したりすることができるようにする。」との記載があります。

回文で言葉の楽しさに気づき、言葉というものに興味をもつことは、伝え合いや豊かなコミュニケーションへの芽になると言えるでしょう。

▼参考

文部科学省 幼稚園教育要領 ねらい及び内容

【国語編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説

 

回文でできているというだけで、無理があって面白い。

でも、その「面白い」によって言語の楽しさに気づき、コミュニケーション能力や作文力にもつながっていくのではないでしょうか。

 

 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

絵本レビュー「あんなにあんなに」

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大人向けの絵本です。

全ての「親」にオススメします。

 

1.あんなにあんなに

▼なんと、現在youtubeで「全文公開ムービー」が公開中です。

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タイトル あんなにあんなに
発行年 2021年
作者 ヨシタケシンスケ
出版社 株式会社ポプラ社
本のサイズ 15.3×21.7cm
ページ数 47ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
大人向き
オススメ度 ★★★★☆

 

2.あらすじ・内容

物語ではありません。

「あんなに〇〇だったのに」「もうこんな」

このフレーズを繰り返して、お母さんの目線で子供の様子を表していきます。

「あんなに欲しがってたおもちゃなのに、買ったらもう見向きもしてない」

「あんなに笑ってたと思ったのに、もうこんなに泣いてる」

親なら誰もが経験のあるような、子供の様子を描いています。

 

そして、文章はほぼこの2つのフレーズしか使っていない中で、ページを進むごとに、子供の成長を表現していきます。

「あんなに泣き虫だったのに、部屋に入るななんて言う」

「あんなにブカブカだった大人物のジャケットが、もうピッタリ」

時が経つにつれ、「あんなに」と「もうこんな」の間に「時の流れ」ができるようになります。

大きくなった子供を前にお母さんが「あんなにあんなにいろいろあった」と回顧するのです。

 

3.どの世代にも刺さる!親泣かせ絵本

この作品は絵本でありながら、完全に親向けと言えます。

そして、この絵本の驚きのポイントは、親ならどの世代の方にも刺さるという点です。

小さな子供の親

目の前の子供の様子を、絵本の中の子供を比べ「わかるわかる」と頷けます

「あんなにきれいにしたのに、もうこんなに散らかっている」や「あんなにお腹すいたって言ったのに、全然ご飯食べてない」といった描写に、共感し通しです。

そして、こんなに手がかかり、親にべったりなこの子にも、いつか「部屋に勝手に入るな」なんて言われる日がくるのか…と思うと切なく、大変だけど可愛くて仕方がない今の貴重さに気づかされます。

 

思春期以降の子供の親

小さな子供のいる親の共感を呼ぶ絵本は、他にも色々あります。

しかし、この絵本は驚くことに思春期以降、成人した子供がいるという方も「泣ける」というのです。

我が子が大人になっているという方々には、「あんなに〇〇だったのに」という我が子との思い出がたくさんあります。

普段大人になった我が子を前に、思い出すことのないそのたくさんの愛おしい思い出が、この絵本によって思い起こされるのです。

子供は目の前にいても、かけがえのない、もう戻らない貴重な時間の存在に気づかされます。

 

▼簡単に読めるので、立ち読みで泣いてしまう方続出です。

 

▼さらに、「みんなでつくる”あんなにあんなにフォトムービー」として、一般の方々の「あんなにあんなに」フォトで構成されたムービーも公開されています。

youtu.be

自分の子でもやってみたくなりますね。

 

私自身、この記事を書くために読み返していましたが、もう何度目か…またしても涙してしまいました。

この本は、子供が成長していくどの段階にあっても、どこか自分と子供に重なるところがあり、ずっと手元に置いておきたくなります。

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

本を選んで置いておくだけでもOK!お家の図書館化が教育になる

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家に色々なジャンルの本を置き、子供がいつでも手に取ることができるようにすることを「お家の図書館化」と私は読んでいます。

お家の図書館化は大きな教育効果があるのです。

 

1.ノーリスク・ハイリターン!お家図書館化のメリット

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教育的な効果を望んで子供に何かさせようとすると、金銭面や継続できるのかといった、多少のリスクがあります。

しかし、お家の図書館化はノーリスク

弊害は何一つありません。

その反面、得られるリターンは絶大です。

 

多ジャンルの本を読む子ほど学力が向上する

2019年にベネッセが公表した研究によって、多くのジャンルの本を読む子供ほど学力が向上するということが分かりました。

色々なジャンルの本を読む子供は、読む本の種類が少ない子供や本を読まない子供に比べ、1年間の偏差値の上昇した幅が大きかったというのです。

中でも、社会科でその傾向は顕著でした。

▼参照:株式会社ベネッセホールディングス

【小学生の読書に関する実態調査・研究】
幅広い読書が「思考力」や「創造性」にプラス効果

 

多ジャンルの本で自分の「好き」を見つけるキャリア教育

色々なジャンルの本を読み、自分の興味関心のあるものや好き嫌いを知ることは、重要なキャリア教育になります。

「キャリア」と言うと、職業についての教育だと考える方も多いでしょう。

しかし、これからのキャリア教育でのキャリアは「自分らしい生き方」と考えられるものです。

文科省では「キャリア」を以下のように捉えるものとしています。

自分の役割を果たして活動すること,つまり「働くこと」を通して,人や
社会にかかわることになり,そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」となっていくものである。
 このように,人が,生涯の中で様々な役割を果たす過程で,自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく連なりや積み重ねが,「キャリア」の意味するところである。

(引用:中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成 23 年1月 31 日)

小学生のうちは、自分のことを見つめ、好きなものや嫌いなもの、興味のあることに気づくことが大切なキャリア教育の一環とされています。

多ジャンルの本に触れることは、小学生の間の大切なキャリア教育となり得るでしょう。

 

本を好きになるきっかけに

興味のあるジャンルの本が、いつでも手に取れるところにあれば、本を好きになるきっかけになります。

子供は、物理的に身近なところに本がなければ、本を好きになることはありません。

色々な本がいつでも手に取れる場所にあれば、自分の好きなジャンルの本と出会うことができ、読書を好きになるきっかけとなります。

 

2.やってみよう!お家の図書館化

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メリットの多いお家の図書館化。

さらに、お家の図書館化を実現するのはとても簡単です。

ポイントは以下の4つ。

・多ジャンルの本を用意
・すぐに手に取れる場所に置く
・時々入れ替える
・時々大人も手に取る
 

多ジャンルの本を用意

色々なジャンルの本を用意しましょう。
何を用意すればよいかわからない場合は、ぜひ図書館に行ってみてください。
児童書のコーナーに行けば、本はジャンル別に並んでいるので、そこから1冊ずつ借りてみるという方法がオススメです。
就学前のお子さんであれば、児童書のコーナーから選ぶだけで十分です。
小学生で本の好きな子供であれば、児童書に限定せず、大人向けの本からも数冊選んでみてください。
 

すぐ手に取れる場所に置く

本は、子供が読みたい時にすぐ取れる場所に置いてください。
本棚の高いところなど、大人が取ってあげなければならないような場所では、本と子供との距離ができてしまいます。
子供が読みたい時に、すぐに手に取れる場所に置くことで、子供にとって本を身近なものにすることができます。
 

時々入れ替える

本は時々入れ替え、本棚の鮮度を保ちましょう。
同じ本にしか触れられなければ、子供の世界は広がりません。
本は図書館で借りるのがオススメです。
また、最新の本でも、今はネットで中古を買うことができます。
お家図書館を継続していくには、あまりお金をかけすぎないことも重要です。
この時、必ずしも子供と一緒に本を選ぶ必要はありません。
大人がランダムに選んだ本が、親子の予想に反して子供に刺さることもあるのです。
 

時々大人も読む

大人が本を手に取る姿を見せることも、子供を本好きにする大切な要素です。
子供は大人が興味をもっていることに、同じように興味をもちます。
大人があえて「へえ、そうなんだ」などと声に出して本を読むと、子供も「なになに?」と一緒にのぞき込んできてくれるのではないでしょうか。
 

3.まとめ

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  • 多ジャンルの本を読む子は学力が向上する。特に社会科でその傾向が顕著。
  • 多ジャンルの本に触れ合うことがキャリア教育になる。
  • 色々な本が手に取れる場所にあることで、本を好きになるきっかけができる。
  • 「お家の図書館化」は多ジャンルの本、すぐ手に取れる場所、本を入れ替える、大人も読むということで実現できる。

お家の図書館化は、本当にメリットが多く、デメリットはありません!

親が自分一人で本を選んで置いておくだけで教育になるのです。

今はネットで予約して、図書館では受け取るだけで済むといった公立図書館のサービスも充実しています。

忙しくて図書館へ出向いたことがないという方も、ぜひ一度図書館に足を運んでみてください。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

絵本レビュー「えらぶえほん」

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私の最もお気に入りの絵本です。

 

1.えらぶえほん

 

 

タイトル えらぶえほん
発行年 初版 2019年
作者 絵:ニック・シャラット 文:ピッパ・グッドハート
訳:聞かせ屋。けいたろう
出版社 株式会社 講談社
本のサイズ 約27.5×24cm 
ページ数 25ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
2歳頃から何歳でも
オススメ度 ★★★★★

 

 

2.あらすじ・内容

タイトルの通り、たくさんのものの中から自分の好きなものを選ぶ絵本です。

見開きごとに、のりもの、食べ物、家、服、なりたい職業、明日したい遊びなどのテーマが設定されており、たくさんの絵が描かれています。

そのたくさんの絵の中から、自分の好きなものを好きなだけ選んでいくのです。

 

3.楽しいだけじゃない!思考力を伸ばすパーフェクト絵本

この絵本は、子供が絵本を楽しむという要素と、思考力の育成という学習効果の両方を備えた、かなり優れた作品です。

 

思考力の育成


この絵本の最大の魅力は、絵本でありながら子供に「たくさん語らせる」ことができる点でしょう。

 

「言語活動」は、教育の現場では大変重要視される概念です。
言語活動とは、おおまかに言うと、「話す・聞く・書く・読む」活動です。
自分の考えを話したり書いたり、また他者の考えを聞いたり読んだりすることで、思考は深まります。
そして、またその思考を言語活動を通して深めていく…
思考力の育成と豊かな言語活動は、同時に行われていくものなのです。

 


また、私が教員として勤務していた頃、社会科の研究授業をした際に、指導に来てくださった講師の方が「子供に『だってね』をたくさん語らせてください」と言われたのが印象に残っています。
「だってね」は次に理由を述べる時に使う言葉。
それまでの学習を根拠に、論理的に語らせるような場面を作るということです。

 

この絵本では、自分の中にある理由を生き生きと子供に語らせることができます
もちろん、「論理的」とは言えません。
しかし、「選択」には何かしら理由があるのです。
子供に「何でそれにしたの?」と聞けば、「花柄が好きだから、このスカートがいい」「お城に住めば、家族みんなの部屋があるから」など、何かしら自分なりの理由を語らせることができます。
絵本は普通「受け止める」ものだと思います。
この絵本ほど、子供に生き生きと話をさせられるものはないでしょう。

 

とにかく楽しい!


上記では、言語活動などとお話しましたが、これほどたくさんの選択肢の中から、好きなものを好きなだけ選べる、というのはとにかく楽しいのです。
思えば、子供が自分で好きなものを好きなだけ選べる、という場面はなかなかありません。
それが許されるこの絵本に、とにかくワクワクできます。

 

想像力をかきたてる


さらに、子供の想像力をかきたてるのです。
私の娘は、「どの家に住みたい?」のページで、よくお城を選びます。
「一番上のここは自分の部屋で、下の2つの部屋はお父さんとお母さんの部屋で…」と語りだします。
自分の選択したもので、その先どうしたいか、何をしたいかといったことまで子供に想像させてくれるのです。

 

 

 

とにかく楽しい!
でもそれだけじゃない。
一人で読んでも、みんなで読んでも楽しい、まさにパーフェクト絵本です!

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。



 

絵本レビュー「ノンタンぶらんこのせて」

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最初にご紹介するのは「ノンタンぶらんこのせて」です。

 

 

1.「ノンタンぶらんこのせて」

 

タイトル ノンタンぶらんこのせて
発行年 初版 1976年
作者 キヨノサチコ
出版社 偕成社
本のサイズ 約15.5×18.5cm 厚さ約0.8cm
ページ数 31ページ
対象年齢
(公式なものではなく、私の感覚です)
2~4歳
オススメ度 ★★★★★

 

2.あらすじ・内容

ノンタンがぶらんこで遊んでいるところに、お友達の動物たちが「ノンタンぶらんこのせて」とやってきます。

しかし、ノンタンは頼まれるたびに「これからスピードのりする」などと言って、お友達にぶらんこを譲りません。

すると、お友達は「ノンタンとはもう遊ばない」と言い出したので、慌てたノンタンは10まで数えたら順番を代わると言います。

1・2・3までしか数えられないノンタンに代わり、みんなで声を合わせて10まで数えてあげ、仲良く遊ぶことができました。

 

3.魔法の唄「おまけのきしゃぽっぽ」

かなり有名なこちらの絵本。

人気のゆえんは、なんといっても作品中に登場する「おまけのきしゃぽっぽ」の唄にあります。

ノンタンの代わりに、お友達がみんなで10まで数えてあげるシーンでうたわれているのです。

1・2・3・4・5・6・7・8・9・10

おまけのおまけのきしゃぽっぽ

ぽーっとなったら かわりましょ

 

この唄を、こちらの作品のオリジナルだと思っている方も多いのではないでしょうか。

私もそう思っていました。

しかし、ネット上では「出版年より前、子供の頃から、お風呂でうたっていた」という方もいました。

「かわりましょ」の部分はシチュエーションによって変えられて、色々な場面で、昔からうたわれていた唄のようです。

日本子守唄協会のHPでも紹介されています。

NPO法人日本子守唄協会 子守唄 - おまけのきしゃポッポ 「 子守唄さん ありがとう 」 日本子守唄協会編著 より

 

 

この唄は、作品中のノンタンのような状況の時にうたうものとして、多くの家庭、保育園、幼稚園でうたわれています。

まだまだ「みんなで仲良く」「順番で」が難しい、2〜4歳くらいの子供たち。

この唄をうたうと、気持ちよくお友達とじゅんばんこができる、魔法の唄なのです。

(もちろん、残念ながら魔法が効かないこともあります…)

 

この唄を知っている子は「あ、知ってるー」と思え、知らない子は、これからじゅんばんこができるきっかけになるかもしれません。

子供にとって「みんなで仲良く遊ぶ」というのが、どういうことなのかを知る、第一歩になるかもしれません。

オススメ度満点です!

 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。